今日から繋げる古代風景

日々の出来事を無理やり歴史に紐付ける人

古代メキシコ展でみた歯の装飾学

 

世界史マニアを散々興奮させた古代メキシコ展の、東京展が終わった。

前々から訪れてはいたけど、正直他の方のブログのほうが博識だったり写真良くて、私みたいな

「トウモロコシ! 南米からスペイン人が持ち帰ってポルトガルに渡り、安土桃山時代の日本に「唐(中国)のもろこし」と名前つけられた、大平洋を挟んで世界の反対側から伝わってきた作物!!の原型彫刻ある!」

「ライトで映し出される絵文字、永遠に眺めてられるなぁ……わざわざ難しい書き方をして神聖さを出すの、一、二、三を壱、弐、参と書く感覚が少し近いんだろうなぁ。中学の頃の私みたいだ」

とか、斜めから褒めることしかできない人間には現地リポートなど向かないのである。とはいえ、一番最初に展示されていたドクロについて、少しは語れそうなのでここに呟いてみる。

 

 

今回メキシコ展を通して、本物のドクロが一つ、そしてドクロの作品がいくつか展示されていることからも、アステカ文明におけるドクロの重要さが察せられることだろう。そして歯に対するこだわりも見られる。

 

アステカ、およびマヤ文明が歯の装飾にこだわっていたことは、英語で「maya teeth」とでもググってくれれば分かる。写真載せたいけど、一応遺骨なのと、引用先ちゃんと調べずに画像引用するのはしたくないので、申し訳ないけど調べてね。小さい宝石を歯に埋め込んだり、あえて健康な歯をいている写真が出てくるはず。

 

今回の展覧会にあったドクロでもそれが見られた。宝石はないんだけど、人為的に削られて三又になった前歯。かなり真っ平な臼歯も手を加えていたのかもしれない。

 

そんな歯にこだわった文明ながら、展示品には解剖学的におかしなものが多い。例えばここらへん。(画像は特別展「古代メキシコ」 公式サイト (exhibit.jp)より)

 

 

何が変かと言うと、正中に一本歯が生えていることだ。

歯は普通一対ずつ、鏡を見れば前歯は顔の正中線から左右対称に生えている。それをあえて真ん中に一本置くのは、口をちゃんと見た事がないからではなく、人心供儀に関わる以上、頭の解剖をしっかり理解したうえで、あえてやっていると考えるのが普通だろう。

他にも神の横顔などで歯を描くとき、必ず前歯三本を描くという様式があるような気がする。写真はないけどテスカトリポカも横顔の歯は三本だった。(画像:メキシコ展公式サイト、SNSより)

画像

 

こういった歯の文化は、何もアステカ固有ではなく、実は全世界的にあったりする。日本でも縄文人は歯を儀式的に抜いたり削ったとされていて、抜き方の様式も規則性があった。

西日本の晩期縄紋人の抜歯

成人式と抜歯(No.64)/藤井寺市 (fujiidera.lg.jp)より

 

こういった歯一つだけでも語り明かせて考察できるのだから、他の部位に目を向ければ勿論もっと盛り上がる。展示が太古に存在した文化へ我々の想像をいざなう。歯に興味がなくたっていい。酒でも料理でも神殿でも、終わってから調べなおしたいと思うことが多くの人に湧いたはずだ。もっと知りたいことの増えるという意味では、好奇心を掻き立てるとても良い展覧会だった。