今日から繋げる古代風景

日々の出来事を無理やり歴史に紐付ける人

新宿ハロウィンから古代ケルトについて

ハロウィンから数日経ち、なんで今更ハロウィンについて書いているのか。まあ連日、新宿での騒動はあるせいで、ハロウィンが終わったという実感がないせいでもある。
 
もしこの記事にハロウィンの雑学を期待し、来年にでも周囲にひけらかそうと思うなら、他のサイトを参考にしたほうがいい。
それでも折角このブログを見てくれたのだから、全ての真偽を確かめてはいないが、ハロウィンの雑学が100個乗った記事を紹介しておく。これでハロウィン雑学王になれるとは思う。
 

ハロウィンのこと、正しく理解していますか

知ればきっとタメになる蘊蓄100章-東洋経済

 
(前文、飛ばして結構)
 

既に五日前のことながら、未だに取り上げられる新宿ハロウィン。毎年翌朝の街にゴミが散乱し、今年は軽トラをひっくり返したこともあり、テレビでは主に、ハロウィンで騒ぐ群衆の危険性について語られている。


しかし街や駅としては迷惑だが、別に参加者全員が迷惑をかけたわけでもなく、翌朝の掃除ボランティアに参加する人もいる。一部の人が目立つせいで全体のイメージが悪くみえるのは、少し前までの「オタク」、規模を広げればイスラム教と同じ様相である。
 
同じ文化や趣味を持とうとも、分別のある人とない人は存在する。だからイデオロギーを標的にその集団全体を叩いてしまうと、それは罪なき人も巻き込んだ差別に直結する。
 
勿論、外から見れば一様な人々の中で、誰が犯罪に関わるかなんてわからないわけで、だからこそ犯罪があれば連帯責任として、その祭全体に規制をかけるしかない。
 
新宿ハロウィンという発展途上の文化とマイナスイメージの規制。この折り合いが「オタク」のように落ち着くまで、今少しかかりそうである。
 
(前文終了)
 
さて、昨日深夜にとあるテレビ番組を見ると、新宿のハロウィン騒動に対してアナウンサーがうろ覚えながらこんあコメントをしていた。
 
「ハロウィンって元々、お化けを追い払うお祭りでしょ?」
 
そしてハロウィンで騒ぐことについて批判的なコメントを続ける。ほかの人はウンウンと同調していたが、ちょっと待ってほしい。
 
ハロウィンが? お化け追い払う?
 
私が聞いた話だと、ハロウィンはアイルランドのお盆。冥界の門が開いて先祖や幽霊がこの世に現れるので、襲われないようお化けになりきる、という話。お化けを追い払うなら、むしろ十字架とか聖書とか持ち歩くべきでは?
 
そういえばネットでも、ハロウィンは古代ケルトの風習とか、仮装はお化けにするのが正しいとか、情報源不明のままハロウィンの情報が流布している。酷いものだと、トリックオアトリートのトリートが英語で「お菓子」という意味だとか言っていた。それは意訳しすぎだろ。
 
ハロウィン自体は世界に広まり、その定義も過ごし方もバラバラである。国全体で騒ぐところ、お盆のように墓参りするところ、そもそもイベントが浸透していないところ…などなど。
 
けれど「ハロウィンは元々〜」と主張するのは、世界中に広まったハロウィンが共通の起源を持っていると思っているからである。
 
というわけで、軽くハロウィンの起源についてネットに乗ってる記事を整理して、一つ一つ見ていった。とりあえず「ハロウィン 雑学」で検索をかけ、一番上にヒットしたまとめサイトをみて抜粋する。
 
実はよく知らないハロウィンの雑学「そもそもなんのイベント?」
 
古代ケルト民族は、1年の終わりを10月31日と定め、その夜を死者の祭としました。
 
この夜は死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てくると信じられていた。これらから身を守るために仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いていた。
 
今回は、この話について考察していく。
 
まず、古代ケルトについて。ケルトとは古代ギリシアより西ヨーロッパに住んでた人々の総称。彼らは文字を持たず記録が残りにくかったため、今でも謎の多い民族集団である。後にローマに土地を征服され、紀元1世紀頃まで存在されていたそうだが、ケルト文化字体は衰退して消えていった。
 
後に、中世ごろに民族主義が流行って「ケルト民族」を自称する集団が現れる。文化は古代ケルトと繋がっておらず、近年では遺伝子調査から、全くの別物とされている。
 
この時点で、ハロウィンが古代ケルトと関係がないと思われるが、調べるとハロウィンの元には「サウィン祭」があるというサイトが多い。だが、厳密にいうと少し違う。調べるとこんなブログがあった。
 
意外と知らないハロウィンの起源と由来。古代ケルトのサウィン祭に迫る
 
その中でも特に大きな影響を与えているとされるお祭りは次の4つ。

さらにこの中でも最も古く、ハロウィンの始まりとされているのが古代ケルトのサウィン祭です。

キリスト教が普及される中世、土着の宗教は悪魔崇拝とされて淘汰されていく。そして地元の祭りは擦り合わせの結果、キリスト教に沿ったイベントとして変化する。また歴史を経て、複数の祭りが統合されることも珍しくない。だが待ってほしい。上記のサイトが正しいとすると、果たして本当にケルトがハロウィンの起源だと言えるのか。

一つ目に、四つの祭りが混ざっているのに、たった一つの祭りだけを起源として声高々に言うべきか。二つ目に古代ケルトの文化は廃れており、古代のサウィン祭自体の概要が残ってない。故に2000年前の要素がハロウィンに残っているかが分からないのである。

また現在日本で行われる仮装やトリックオアトリートといった文化は、企業などのキャンペーンにより19世紀アメリカで誕生したとされている。つまりハロウィンの祭りに関して、古代ケルトは名前だけが伝わっているだけで俗説の可能性が高い。

因みに中世からケルトを名乗った人々によるハロウィン。これは既にキリスト教と混ざった祭りである。ハロウィンという名前も「hallow eve(万霊節の前日)」から来ている。また、今と形態が違うだろうが、「ジャックオランタン」や、聖職者が家々を回ってケーキを貰い、ケーキを渡さない家は呪われるなどという現代との類似点がみられる。

あと古代ケルトは廃れたといったが、征服したローマやギリシア側の記録(例えばカエサルガリア戦記)よって神話などは残っている。クーフーリンで有名なアルスター伝説とか、ドルイドという呪い師の存在とかも、キリスト側の資料に残っている。

ただし、キリスト教から見ればケルトは異端の悪魔宗教。またキリストの生まれる紀元前でも、ローマから見れば西にいる未開の地の蛮族である。故に偏見や忌避感も混ざっている。他のサイトで「サウィン祭とは、こんな祭りです」と言って、悪魔的な儀式とか人頭を神に捧げる話とかあったら、そういった資料が元となっているかもしれない。

また中世アイルランドは8世紀にバイキングが侵入し、それまでの歴史的資料が紛失したという歴史もある。ゆえにハロウィンの話が真実かもしれないが、若干のファンタジー、後世の誇張が入っている可能性も忘れずに見るべきである。

というわけで、長々とハロウィンとケルトに関係について書いた。まとめると

・ハロウィンは中世アイルランドで幾つもの祭りが纏まって、今に通じる原型ができた

・ハロウィンと古代ケルトの関係は薄い

・元とされるサウィン祭について資料は殆どなく、俗説や誇張があると考えるべき

・現在のハロウィンは、他のお祭りやアメリカの企業による影響が大きい

といった感じだろうか。完全なる自己満足の文章だが、まとめてみると、まだ資料や根拠が不安定なところもある。とはいえハロウィンが終わってからこんなに調べても余り意味を成さずに虚しくなったのでここらで完結とする。

それに、まだまだハロウィンが終わっていないのだから……(ゲームの周回の話)